もしも、大切な人が認知症になったら。

認知症

もしも、大切な人が認知症になったら、あなたは何を思いますか。

そもそも認知症とは

認知症とは、脳の病気や障害等の原因によって、認知機能が低下し、日常生活に支障が出る状態のことを言います。

認知症になると、覚えることが難しくなったり、今まで普通にできていたことができなくなったりします。また、怒りっぽくなったり、感情のコントロールが上手くできなくなる人もいます。

認知症の症状は、人によって様々です。

認知症になってしまったら、何もできなくなるの?

認知症について、あなたはどんなイメージを持っていますか。「認知症になってしまったら、何もできなくなる」「認知症になってしまったら、全ておしまいだ」そんな絶望的な印象を持っている人も少なくないのかもしれません。

ですが、それは誤解です。

認知症になったからといって、何もできなくなるわけではありません。

もしも今日、あなたや、あなたの大切な人が、認知症の診断を受けたからといって、昨日までできていたことが、今日突然できなくなるわけではありません。

もちろん認知症の症状が進行していくにつれて、苦手なことも増えていきますが、多くの場合は、症状の進行はゆっくりで、できることはたくさんあります。

例えば、家事や好きで続けてきた趣味等、日常生活で長く続けてきたことは体が覚えているので、認知症になったとしても、支障なくできることが多いです。

よく、認知症だからといって、生活の全てを手伝ってしまう人もいますが、それでは、本人のできる能力を奪ってしまうことにも繋がります。

認知症について正しく理解し、必要に応じだ、適切な支援ができれば、周りで支える人の負担も軽減するのです。

認知症の基礎知識

代表的な4つの認知症

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβタウタンパクという脳にとって良くない物質(ごみ)が溜まり、脳の働きを邪魔します。そして脳全体に萎縮がみられます。

症状としては早い段階から記憶障害、見当識障害、うつ等の症状が出現します。認知症の中で最も多いのがこのアルツハイマー型認知症です。

血管性認知症

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血等の脳血管障害が原因になる認知症です。

症状は、脳のどこにどの程度のダメージがあるかで大きく異なります。

アルツハイマー型認知症ほど記憶は障害されづらいので、軽い物忘れ程度の場合が多いです。

一方で感情のコントロールは難しく、感情の起伏が激しくなる傾向が見られます。意欲が低下したり、複雑な作業が困難になることもあります。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、αシヌクレインという脳にとって良くない物質が溜まるのが特徴です。

パーキンソン症状や幻視の症状が現れることが多いです。

日内変動があり、症状が強く出るときとあまり出ないときの差があるのも特徴です。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、脳の理性を司る部分が障害されることで我慢ということが難しくなってきます

また、怒りっぽくなったり、性格に変化が現れたり、同じ行動を繰り返したりします。

周りの人には理解されにくい行動をとってしまうこともあります。例えば万引きや性的な逸脱行為等、非社会的な行動をとってしまうことがあります。

中核症状と行動・心理症状(BPSD)

中核症状

中核症状とは、脳の機能低下によって、直接起こる症状のことを言います。

具体的には、記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能障害、失語・失認・失行があります。

例えば、風邪を引いたときに、咳が出たり、鼻水が出たりします。これは、風邪を引いたら避けることのできない症状です。

認知症の症状も同じように捉えることができます。風邪を引いたら咳が出て鼻水が出るように、認知症になると中核症状の記憶障害や見当識障害、実行機能障害等の症状が出てしまいます。

行動・心理症状(BPSD)

行動・心理症状(BPSD)とは、中核症状と2次的要因によって複合的に引き起こされる症状です。周辺症状と言われることもあります。

2次的な要因とは、本人の性格や生活環境、人間関係等を指します。

例えば中核症状である見当識障害により、自宅にいるのに、トイレの場所がわからないことにより不安を感じている人がいたとしましょう。このような状況では、誰でも不安を抱きます。そんな不安な状況の中、周りの人に「なんでわからないの!」と周りの人から責められたりするような2次的な要因により、さらに不安は募り、混乱してしまいます。その結果、徘徊や暴力といった、行動・心理症状(BPSD)が現れます。

行動・心理症状(BPSD)は、周囲の不適切な対応や、不安やストレス等の心理状態が要因となり現れる症状です。認知症の人からしたら、周りにいる人も環境の一部であることを忘れてはいけません。

大切なのは、原因を探るということです。なぜ不安なのか、何が心配なのか、本人が安心できるような対応をすることで、行動・心理症状(BPSD)は減少していきます

大切なのは、「行動・心理症状の方の混乱や不安の原因を理解すること」です。ご本人が安心できるよう、混乱しないように適切な対応をとることで、穏やかに生活することが可能となり、症状が現れることなく日常生活を送ることができます。逆に、理解されないことで症状がより悪化し、介護が困難となるケースもあります。

行動・心理症状(BPSD)の具体的な症状や詳しい説明は、こちらをご参照ください。

加齢による物忘れと認知症による物忘れの違い

誰でも年をとると、思い出すのに時間がかかったり、新しいことを覚えることが難しくなります。

最近、物忘れが増えてきた。もしかして、認知症かも。そんな経験ありませんか。

加齢による物忘れと認知症による物忘れには違いがあります。

ポム太郎
ポム太郎

昨日の夜は、何を食べましたか?

昨日の夜は、お寿司屋さんで、ブリを15貫、炙りえんがわを20貫、中トロを10貫食べました。

こんなふうに、昨日食べたものを細かく正確に答えることができる人は、そんなに多くないですよね。

ポム太郎
ポム太郎

昨日の夜、食事はしましたか

食事の内容を細かく答えることはできなくても、昨日の夜にお寿司屋さんに行って食事をしたことは覚えていて、答えることができる人はたくさんいます。

このように体験の一部だけを忘れてしまうことは、誰にでも起こりうることです。

しかし、認知症になると、お寿司屋さんに行って食事をしたという体験したこと自体を忘れてしまいます。

他には、約束の日時が思い出せない、曜日が思い出せない、今何をしようとしていたのか思い出せない、声をかけてきた人の名前が思い出せない等の物忘れは、年をとれば誰もが経験することです。忘れっぽくなってしまうのは、老化現象で、加齢による物忘れに該当します。

下記にまとめてみました。

加齢による物忘れ

  • 体験の一部を忘れる。
  • ヒントがあれば思い出せる。
  • 日常生活に支障はない。
  • 物忘れの自覚がある。

認知症による物忘れ

  • 体験したこと自体を忘れる。
  • ヒントがあっても思い出せない。
  • 日常生活に支障がある。
  • 忘れていることに自覚がない。

加齢による物忘れと認知症による物忘れ見分ける方法は?

物忘れの中には、認知症が原因になっている「配慮すべき物忘れ」もあります。放置することで、認知症の発見が遅れてしまうこともあるので、注意が必要です。

では、どのように見分けたら良いのでしょうか。例えば、日常生活の中で「次病院に行くのはいつだったかしら」と予定の詳細を思い出せないとき、本人には物忘れの自覚があります

しかし、病院に行く予定があったこと自体を忘れてしまっている場合、本人には物忘れの自覚はありませんので、「配慮すべき物忘れ」に該当します。

このようなことが続いた場合には、医療機関の受診も検討してください。

認知症は早期発見が大切

認知症の症状に最初に気付くことができるのは、近くにいる家族である場合が多いです。認知症の症状に気付いたら、早期に医療機関の受診を検討することが大切です。

認知症は、どうせ治らないからといって、放置するのはやめましょう。

早期に発見することのメリット

今後の生活の準備を整えることができる

早期に認知症の診断を受け、症状が軽いうちに認知症への理解を深めて認知症と向き合い話し合うことで今後の生活の準備をすることができます。

進行を遅らせることができる

早期から、薬による治療本人の気持ちに配慮したケアを行うことで、進行を緩やかにすることも可能です。

改善が可能な場合もある

認知症を引き起こす病気には、正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症等、治療により改善が見込めるものもあります。早期に受診し、原因を突き止めることが重要です。

終わりに

最後までご覧いただきありがとうございます。

たかはしポム太郎

おすすめの書籍です。興味があれば、ぜひ見てみてください。

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