認知症の人との向き合い方/家族の心構え

認知症

家族が認知症と診断された時、誰であっても、そのことを受け入れられるまでには時間がかかるでしょう。

はじめは、将来への不安や介護の負担から、戸惑い、認知症の人の行動や言動を否定したくなることもあるでしょう。

そのことで自分を責める必要は全くありません。

認知症の本人だけではなく、家族も、認知症を理解し、受け入れるまでにはある程度の時間が必要なのです。

認知症の受け止め方

認知症の正しい知識を持つ

もしも、認知症の人の言動や行動を受け入れられないことがあっても、怒りの感情を認知症の本人にぶつけてしまうことは避けなければなりません。

認知症について正しい知識を持ち、症状やその原因、経過がわかっていれば、慌てることも少なくて済みます。

認知症で苦手なことが増えるのは、決して恥ずかしいことではありません。その状態をありのまま受け止め、必要な支援をしていきましょう。

認知症ということだけに着目せず、ひとりの人間として接する

認知症を正しく理解することはとても大切なことです。しかし、認知症の症状ばかりに注目しすぎるのは危険です。

認知症と診断されたからといって、その人が急に何もできなくなるわけではありません。急に人格が変わるわけでもありません。家族の関係性にも何も変わりはありません。

しかし認知症の人を見る家族の目は変わってしまうことがあります。突然「認知症だからあれはやらせられない」「認知症だから危ない」と行動を全て管理して、病人として扱ってしまうことがあります。

このような変化を認知症の人は、しっかりと感じ取ることができ、大きなショックを受けてしまいます。認知症になっても感情は残るからです。

認知症になった本人も不安や焦りを感じています。少しでも安心して過ごせるように、本人に対して、今までと同じように接するということが大切です。

症状には理由がある

認知症の人の家族が大変な思いをする症状は、記憶障害等の中核症状よりも、暴言、暴力等の行動•心理症状(BPSD)であることが多いです。

中核症状と行動・心理症状(BPSD)

中核症状とは

脳の細胞が壊れることによって直接起こる症状を中核症状と言います。記憶障害、見当識障害、実行機能障害、理解判断力の低下等がこれにあたります。

風邪を引いた時に、咳が出たり、鼻水が出たりしますよね。これは風邪を引いたら避けることができない症状です。

認知症の中核症状にも同じことが言えます。風邪を引いたら咳や鼻水が出るように、認知症になると記憶障害や見当識障害の症状が出てしまいます。

行動・心理症状(BPSD)とは

行動・心理症状(BPSD)とは、何らかの中核症状に+αで本人の性格や生活環境、人間関係等の2次的な要因が加わることで起こり、行動として現れます。

具体的には、徘徊や暴言・暴力、帰宅願望、不潔行為等があげられます。

2次的な要因を取り除くことで、行動・心理症状(BPSD)を予防することも可能です。

認知症の人にとっては、周りにいる家族も環境の一部であると捉えることが重要です。

なので、周りの人の行動や態度、対応も行動・心理症状(BPSD)を誘発する原因になる可能性があります。逆に言えば対応次第でBPSDの出現を抑えることも可能だということです。

症状に隠された原因

暴言・暴力

例えば、自力で着替えをしようとしているけど上手くできない認知症の人に対して、近くで見ていた家族が声をかけ、ボタンを閉めるのを手伝おうとしたら、認知症の人が突然怒り出し、暴力を振るおうとした。という場面を想像してみてください。

この認知症の人は、どうして突然怒り出したのでしょう。

家族からしたら、ただ手伝おうとしただけかもしれませんが、本人からしたら、突然声をかけられ、首の辺りに手が伸びてきた。『首を絞められるかもしれない』『裸にされるかもしれない』等と感じて、とっさに暴力を振るおうとしたのかもしれません。

家族には、何の理由もなく、突然怒り出したように見えても、実はその人なりの理由があります。その理由は周りの人の言動や行動が関係していることも少なくありません。

対応次第で、BPSDを悪化させてしまうことがある

認知症の症状によって、衰えを感じている人たちは、日頃から不安や焦りを抱えています。そのため、周りのちょっとした言動や行動、態度によって、深く傷つき、行動・心理症状(BPSD)の悪化につながることがあります。

BPSDを悪化させるNG例

否定する

認知症の人の間違いや失敗を注意したり、否定する。

試す

「あの人の名前わかる?」等と認知症の人の能力を試すようなことをする。

無理強いをする

認知症の人がやりたくないことを本人の意思に反して無理やりやらせる。

行動制限をする

できる能力があるのに取り上げてしまったり、行動を制限する。

家族からすれば、悪気なく、本人のためを思っての言動でも、認知症の人の自尊心を傷付けてしまう場合があります。その結果、不安や怒りの感情が昂り、結果BPSDの悪化に繋がることがあります。

対応次第で症状が改善することもある

症状に隠れた気持ち、心の声に耳を傾けましょう

認知症の行動・心理症状(BPSD)は周りの人の言動や対応がきっかけで悪化してしまうことがあります。逆に言えば対応次第で、症状を改善することも可能なのです。

まずは認知症の人の気持ちに目を向けることが大切です。

家族から見たら不可解と思えるような行動も、なぜそのような行動をとっているのか、理由を探ると、対応のヒントが見てえくることがあります。

例えば、お風呂に入るように促した際、介護拒否がみられることがあります。そんな時は介護拒否の理由を、本人の気持ちになって考えてみてください。

人前で裸になるのが恥ずかしいのかもしれませんし、お風呂の入り方がわからなくて行きたくないないのかもしれません。あるいは、上手く洗える自信がなかったり、動くこと自体が億劫なのかもしれません。

理由はさまざまなことが考えられるため、本人の視点に立って、考えてみましょう。

理由がわかれば、対応の工夫はいくらでもあります。

また、本当の理由を答えてくれるとは限りませんが、落ち着いて話せる環境を整えてから、本人の気持ちを聞いてみるという手段もあります。

話を聞いてもらえただけで、気持ちが落ち着く方もいます。

あれだけ入浴を嫌がっていたのに、入ってみたら、なかなかお風呂からあがりたがらない人もいますよ。

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