介護疲れしていませんか?家族介護者のセルフケア方法10選をご紹介します。

介護

「最近、ふと鏡を見たとき、自分の顔に疲れがにじみ出ていることに気づいた。」そんな家族介護者の声をよく耳にします。介護が日常の一部になっていくなかで、知らず知らずのうちに心や体に蓄積される介護疲れ。「最初は些細な違和感だったのに、気づけば慢性的なストレスや体調不良に悩まされていた」という方も少なくありません。介護は、愛する家族のために尽くす尊い行為です。しかし、自分のことを後回しにし続けていると、介護を続けること自体が苦しくなり、最終的には共倒れになってしまう恐れもあります。この記事では、そんな頑張りすぎている家族介護者の方に向けて、セルフケアの大切さと、今日からできる具体的な方法をご紹介します。自分を大切にすることは、家族のためにもなります。

筆者:たかはしポム太郎

資格:介護福祉士、介護支援専門員、認知症ケア専門士、キャラバン・メイト、登録販売者、チームオレンジコーディネーター研修修了、ユニットリーダー研修修了、認知症チームケア推進研修修了、認知症介護実践リーダー研修修了

私は介護の現場で働きながら、介護や認知症の研修を開催や、情報発信をしています。10年間の介護現場での経験、資格取得等で培った知識を発信していきます。介護や認知症について不安を抱いている方々に役立つ情報をお届けできればと思っております。少しでも不安が解消され、今抱えているお悩みに寄り添えたら嬉しいです。

介護疲れとは

介護疲れ」とは、長期間にわたる介護によって心身に大きな負担がかかり、慢性的な疲労状態に陥ってしまうことを指します。初期にはちょっとした眠気やだるさ、集中力の低下といったサインが現れますが、進行すると不眠や食欲不振、イライラしやすくなる、些細なことで涙が出るなど、日常生活に支障が出るほどの症状が表れることもあります。いつも疲れているのが当たり前と感じている方は、すでに介護疲れの状態かもしれません。

では、なぜ家族介護者は特に疲れやすいのでしょうか。まず大きな理由として、24時間常に気を張っていなければならないという状況が挙げられます。夜中のトイレ介助や見守りなどで慢性的な睡眠不足になりがちですし、介護をしながら家事や育児、仕事を抱えている人も多く、「自分の時間」がほとんどないという現実があります。しかも、家族だからこそ感謝の言葉をもらうことが少なく、努力が報われていると感じにくい点も、精神的な疲れを増幅させる原因となります。

さらに見過ごしてはならないのが、「介護うつ」と呼ばれる状態です。介護に追われる日々の中で、自分の感情にフタをし続けることで、気付かないうちに心が限界を迎えてしまうのです。何に対してもやる気が出ない、何をしても楽しくない、涙もろくなった、イライラが止まらない、こうしたサインは、ただの疲れではなく、うつの始まりかもしれません

介護疲れは、単にがんばりすぎでは片づけられない問題です。大切なのは、自分自身の心と体の変化に早めに気付き、もう少し続けられるではなく、無理をしていないかを基準に行動することです。自分を守ることが、結果的に介護を受ける家族の幸せにもつながるのです。

セルフケアの重要性

介護をしていると、つい自分のことは後回しにしてでも、家族のために頑張らなければならないと思い込んでしまいがちです。しかし、介護は一時的なものではなく、数ヶ月から数年、時には10年を超える長期戦になることもあります。家族のためにという気持ちだけで無理を続けていると、いずれ心も体も限界を迎えてしまいます。大切なのは、自分の健康と心の余裕があってこそ、質の高い介護が継続できるという事実です。

介護疲れで倒れてしまっては、結局家族にもっと負担をかけてしまう。この視点を持つことが、セルフケアの第一歩です。自分を大切にすることは、決して自己中心的な行動ではなく、むしろ介護を持続可能にするために必要不可欠な選択なのです。

とはいえ、多くの家族介護者が「自分だけ休んでいいのか」「申し訳ない」といった罪悪感に悩まされています。ですが、ここで改めて考えてみてください。もし自分の親しい友人が、同じように介護で疲れ切っていたら「少しは休んでね」と声をかけたくなるはずです。自分にも、その優しさを向けていいのです。

休むことは、決してさぼることではありません。心と体をリフレッシュすることによって、視野が広がり、気持ちに余裕が生まれ、介護の質も自然と上がります。むしろ、意識的に休むことは、プロの介護職でも大切にしているスキルのひとつです

介護者であるあなた自身が「元気でいること」こそが、介護を受ける家族にとっての安心であり、幸せにつながる。そんな視点で、自分自身のケアにも目を向けてみてください。休むことも、立派な“介護のひとつ”なのです。

家族介護者のためのセルフケア方法

介護を続けていくうえで大切なのは、自分を大切にする具体的な行動を習慣化することです。

ここでは、家族介護者が日常のなかで実践しやすいセルフケア方法を10項目に分けてご紹介します。
無理なくできることから、ぜひ取り入れてみてください。

1. 短時間でも「自分の時間」をつくる

「10分だけでも、ひとりでお茶を飲む」「朝の散歩を5分する」など、わずかでも自分のための時間を確保することは、心の安定に直結します。介護が忙しいほど、「自分に戻る時間」が大切です。時間の長さよりも、意識的に“自分を優先する行為”がセルフケアの鍵となります。

2. 他人の手を借りることに慣れる(訪問介護・デイサービスなど)

最初は「他人に任せるのは申し訳ない」「気が引ける」と思うかもしれませんが、介護サービスは「家族介護を支えるため」にある制度です。週1回のデイサービスだけでも、自分の自由時間が生まれます。ケアマネジャーと相談しながら、少しずつ取り入れてみましょう。

3. 介護日誌をつける(感情整理・記録)

日々の介護内容や、感じたこと、気づいたことを書き留める「介護日誌」は、感情を整理するうえで非常に有効です。あとで振り返ったときに、変化に気づけたり、がんばってきた証として自信につながったりもします。手帳でもアプリでも、自分が続けやすい方法でOKです。

4. 同じ立場の人と話す(家族会、SNSグループ)

介護の悩みは、経験した人でなければ理解しにくいもの。同じ立場の人と話すだけで「自分だけじゃない」と感じられ、心が軽くなることがあります。地域の家族会やオンラインの介護者コミュニティを活用して、孤立しない環境をつくりましょう。

5. 食事・睡眠・運動の基本を整える

「自分のことは後回し」にしてしまいがちですが、バランスの良い食事、十分な睡眠、軽い運動は、心身の回復力を高める基本中の基本です。完璧を目指さなくてもいいので、「朝食は温かい汁物を1品足す」「夜はスマホを見ないで寝る」など、小さな工夫から始めてみましょう。

6. 「ありがとう」「お疲れさま」を自分に言う

日々の介護の中で、誰かに感謝される機会は少ないかもしれません。だからこそ、自分で自分に「今日も頑張ったね」「お疲れさま」と声をかける習慣を持ってみてください。声に出すと、自分を大切にしているという実感が生まれ、心が少しずつ癒されていきます。

7. プロに話を聞いてもらう(介護相談員・カウンセラー)

「こんなこと、誰にも言えない」と思っていた悩みが、専門家に話すことでスッと軽くなることがあります。地域包括支援センターの介護相談員や、メンタルケアのカウンセラーなど、話を受け止めてくれるプロの存在を知っておくだけでも安心感につながります。

8. ときには介護から完全に離れる時間を作る

週に1回、半日だけでも介護から完全に離れる時間を設けてみましょう。信頼できる家族やショートステイを活用して、“自分の人生を思い出す時間”を持つことは、心の栄養になります。罪悪感ではなく「必要な充電時間」と捉えてください。

9. 趣味や楽しみを「贅沢」と思わず持つ

「趣味なんて不謹慎かも」「楽しんでる場合じゃない」と感じるかもしれませんが、趣味や楽しみは介護を続けていくうえでの“エネルギー源”です。映画を観る、手芸をする、推しのライブ配信を観るなど、どんな形でも構いません。自分の気持ちが和らぐ時間を肯定的に持ちましょう。

10. 制度や支援を知っておく(介護保険・レスパイトケアなど)

日本には、家族介護者を支える制度が数多くあります。介護保険による訪問介護・通所介護だけでなく、レスパイト(休息)を目的としたショートステイや、一時的な支援金なども存在します。ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、利用できる支援をしっかり把握しておくことが、精神的な安心感にもつながります。

これらのセルフケア方法は、「頑張らない介護」を続けていくための具体的なヒントです。すべてを一度にやる必要はありません。まずは「これならできそう」と思えるものから、1つ試してみることが、自分自身を大切にする一歩になります。介護をするあなたも、大切な存在であることを忘れないでください。

「もう限界」と思ったら

介護に限界を感じたとき、大切なのは「無理を続けない」ことです。真面目な人ほど「もう少し頑張れば」と思いがちですが、それが危険なサイン。心身の不調が慢性化する前に、まずは「限界のサイン」に気づくことが重要です。

たとえば、「眠れない日が続いている」「食欲がない」「何もかもが面倒くさい」と感じる状態は、すでに心が悲鳴を上げている証拠です。そのときは、すぐに緊急避難的な支援を活用しましょう。ショートステイや一時入所といったサービスを使えば、一時的に介護から完全に離れて休息を取ることが可能です。

自分で抱えきれないと思ったら、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してください。第三者を介することで、家族だけでは思いつかなかった支援策が見えてくることもあります。また、「専門家が言っていた」と伝えることで、家族の理解や協力を得やすくなるケースもあります。

介護者の心と体が壊れてしまっては、元も子もありません。「もう限界かも」と感じたときは、それは「今すぐ助けが必要」という大切なサインです。一人で抱えず、すぐに周囲に手を伸ばしましょう。

おわりに

最後までご覧いただき、ありがとうございます。

介護は決して「一人で抱え込むもの」ではありません。しかし、多くの家族介護者が、誰にも頼れずに日々の負担を一人で背負い続けています。それは、介護される人のためにも、自分のためにも決して良いことではありません。

介護を続けていくには、「する側」「される側」のどちらにとっても、安心と尊厳が守られていることが何よりも大切です。介護者が元気でいられることが、介護を受ける人の安心にもつながり、家族全体の幸福にもつながります。

まずは、今日から5分だけでも、自分のために時間を使ってみてください。温かいお茶をゆっくり飲む、好きな音楽を1曲だけ聴く。そんな些細な時間でも、自分を労わることはできます。

あなた自身の健康と幸せは、介護の中で決して後回しにしてはいけない大切なものです。どうか、「がんばりすぎない介護」を意識して、今日もほんの少し、自分を大切にすることを忘れないでください。あなたの笑顔が、きっと家族にも届いています。

たかはしポム太郎

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